連載・特集

2024.3.11 みすず野

 東日本大震災が発生した13年前の3月11日から1週間もしないうちに、娘の大学進学に伴うもろもろの雑用で、都内やその近郊へ出かけた。コンビニの食品の棚はがらがら。大学に指定された金融機関は計画停電で業務終了。一度では片付かなかった◆入学式は震災の影響で1カ月遅れて4月末に。同じ日に福島県いわき市の地域紙を訪ねた。大きな船が小名浜港に打ち上げられ、海岸沿いの一つの地区が山際に残る数戸を残し跡形もなく消えていた。津波の恐ろしさに立ち尽くした◆東京電力の原発事故はいまだに終息しない。作家の赤川次郎さんは「今回の原発事故。知人の女性が言った。『故障しても、コンセントを抜きゃ止まる。そういうもんでなきゃ、作っちゃだめよ』これは誠に正しい『素人』の考えである。『故障したら止まらない』などというのは、技術として未完成なのだ」と書いた(『三毛猫ホームズのあの日まで・その日から』(光文社文庫)◆今年の元日には、能登半島地震が起きた。2カ月以上経過したいまも、現地では復旧への日々が続いている。そのことを忘れたくない。もちろん、東日本大震災の発生とその後も。