2025.7.2 みすず野
2025/07/02
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昼食を取ろうと飲食店に入り、カウンターやテーブルに置かれたメニューを見る。個人経営の店だと、パソコンで入力して、プリンターで印刷したものがクリアファイルに入っているという型式が多いようだ。チェーン店だと、何ページもある立派な内容になる◆壁に手書きメニューをずらりと張り出す方法は、食堂でも居酒屋でも定着している。壁の高いところに筆文字で、メニューとは別に季節の料理などを大書して掲げる店も。日替わりや週替わりの献立は暦のようでもある◆「世界で一番読まれているのは何か? 飲食店のメニューだ!」との書き出しで『本の雑誌』7月号は「メニューを読書する!」という特集を組んでいる。漫画原作者の久住昌之さん、作家の平松洋子さんの対談は10ページ。平松さんはメニューは物語の入り口、扉だと語り、久住さんはその店の憲法であり歴史だという◆卒業後30年近くたって学生の頃通った食堂を訪ねた。驚いたことに壁には短冊形をした当時のままの品書きが同じ場所に架かっていた。じっくり見たが書き換えられたのは値段だけ。くすんだ文字が懐かしく、一枚ずつゆっくり読んでいった。