政治・経済

レザンホールのつり天井 10年間強度不足 建築基準法の新基準満たさず 塩尻

客席から見えるレザンホール大ホールの天井

 塩尻市の文化会館レザンホールのつり天井が、現行の建築基準法の施行令が示す安全基準に対する強度が足りない「既存不適格」の状態になって、10年近くたったのにもかかわらず、対策が講じられていない。市は新年度に関連工事の基本計画を策定する方針だ。

 大・中の二つのホールがつり天井だ。建設当時は法の基準を満たしていたが、東日本大震災後を経た平成26(2014)年4月施行の新基準は満たしていない。市によると「継続使用しても直ちに違法ではないが、大規模増改築の際に適法としなければいけない」状態だ。市議会3月定例会の一般質問で、平間正治氏は「(対応に)時間がかかっている」と指摘していた。
 つり天井は天井裏から金属製ボルトで枠組みをつり下げ表面に石こうボードを付けた構造だ。東日本大震災で落下が相次いだため、建築基準法の新基準で、6メートル超の高さにある200平方メートル超の「特定天井」に一定の安全確保が求められるようになった。他自治体でも対応に苦慮している。
 レザンホールは新基準ができた当時、現場確認に多額の費用がかかる見込みだったため検査を見送った。その後も情報収集を重ね、ノウハウを蓄積した業界団体組合に安価で依頼できた。検査は令和4年夏に行い、9月に既存不適格が確定した。
 就任当時の百瀬敬市長も「最優先事項」とし、最短での予算編成につなげた。新年度一般会計当初予算案には、つり天井と施設全体の大規模改修の基本計画策定の業務委託料に3212万円を盛った。
 市内では平成26年度に、国の交付金を活用して1億2000万円余りかけ、小中学校4校でつり天井を撤去した。レザンホールは、令和8年度に開館30年を迎える施設全体の大規模改修を含め、数十億円の事業費が見込まれ、財源確保が課題だ。
 長期休館は避けられない見通しだが、利用者の利便性を考慮し効率的に工事する必要がある。市社会教育スポーツ課の田下高秋課長は「最適な工法とスケジュールで最短でできるよう検討したい」としている。

連載・特集

もっと見る