2025.10.29 みすず野
2025/10/29
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					文庫本のメリットは、単行本より小さくて収納に場所を取らず、値段が安い点だった。小ぶりであることは変わりないが、値段が安いとはいえなくなっている。1000円を超えるものはもう珍しくない◆今年発刊された文庫本で、印象に残った1冊が、詩人の長田弘さんの没後10年に合わせた詩集『世界は一冊の本』(ちくま文庫)だ。150ページ足らずの薄い1冊。長い詩はない◆書名と同じ詩は4ページ。詩集の最後に収める。「本を読もう。/もっと本を読もう。/もっともっと本を読もう。/書かれた文字だけが本ではない。/日の光、星の瞬き、鳥の声、/川の音だって、本なのだ」「人生という本を、人は胸に抱いている。/一個の人間は一冊の本なのだ。/記憶をなくした老人の表情も、本だ。」◆解説でライターの岡崎武志さんは、この詩が著者の詩や評論の集大成ともいえるといい「その人間が生きた証しが一冊の本となり、次世代に松明のように受け継がれる。この世に起こるもっとも感動的なできごとの一つで、そのことに気づかせてくれたのも長田弘さんだった」と書いている。秋の夜長に、小さな声で読みたくなる詩でもある。
 
						 
             
                                     
                                     
                                     
                                     
                                     
                                     
             
             
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