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2025年

2025.10.21 みすず野

2025/10/21
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 安曇野市は道祖神があちこちにある。市のホームページには所在地の地図、所在地・碑文などの一覧、道祖神の種類などが詳しく載っている。これを見るだけでも、人々の思いが伝わってくる◆作家の開高健はベトナム戦争中の南ベトナムを歩いた。「この国の田舎へいくと、路傍に小さな道祖神の祠がある」(『日本の名随筆・旅』作品社)。「弾丸がいつ飛んでくるか知れない草深い水田のほとりにそういう祠を見ると、いつも懐かしさが新しい水のように湧いてきたものだった」◆夕方、あぜ道に老人が腰を下ろして酒を飲んでいた。ちぎれたござに枯れかかった花を挿した空き瓶と、山盛りにした御飯に箸をさした茶わんが一つずつ。小さな祠がある。老人は酒を飲めと欠けた茶わんを差し出す。「道の神様に今お祈りをしてあげたから大丈夫だ。神様はいたずらをしない。これからさき安心していきなさい」。そういうと合掌した◆豊科重柳の交差点で信号待ちで停車すると、道祖神が目に入る。その度にこの話を思い出す。かなりの経験を仕込んだというベトナム戦争の取材の日々。この老人がその後の一路平安を守ってくれたのだと。

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