2025.7.8 みすず野
2025/07/08
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NHKの朝ドラで放送中の「あんぱん」は、漫画家のやなせたかしさん夫妻をモデルにしている。やなせさんが先生を、司会を落語家の立川談志さんが務めた「まんが学校」という子ども向けの番組が、昭和39(1964)年から3年間、放送された。月曜午後6時からだった◆その番組のタイトルそのままに『まんが学校 だれでもかけるまんが入門』(三一書房)という本が、二人の共著で41年に発刊された。談志さんが書いたのは7ページ、そのほとんどがやなせさんの文章◆同様の入門書と異なるのは、漫画を描く材料から始めるのではなく「たとえば石ころをかくにしても、石ころの心をかこうとするべきですよ。表面をうつすつもりじゃいけない。それがデッサンというものです」と説く◆「デッサンにしても心をふるわせてやらなくちゃなア、リンゴをひとつかくにしても、そのリンゴの旅や、リンゴの心や、そのたったひとつのリンゴもたべられない人たちのことや、いろんなことを考えなくちゃ、なア」と語りかける。初めて読んだのは子どもの頃だが、この言葉が胸のなかで生き続けている。それはデッサンだけでないのだと。