連載・特集

2024.5.15 みすず野

 血液型による性格判断や占いなどが一時大きなブームになった。他人との相性を推理する手がかりとして、今でも話題に上ることがある。A型はきちょうめん、B型はマイペースといった類い。それがどの程度信頼性があるのかを真剣に考えたことはない◆クラシック音楽ファンだった漫画家の砂川しげひささんは、著書で歌謡曲の悪口を書いた。ただし格調高く。ある日、クラシック通で知られた作詞家のなかにし礼さんから電話あった。「礼さんから『コノヤロー』という声がきこえそうで受話器をもって、ビクビクしておりました」◆「本読んだよ。面白かったよ」という弾んだ声。ほっとしたが「ただね、モーツァルトの血液型ね、君はB型と推理しているけどね、ぼくはA型だと思うよ。彼はりっぱな曲を書いたけど、新しいことは何もやってないよ。アレはA型だよ」と。ついつられて「いや、モーツァルトはB型です。絶対に」(『がんばれクラシック』朝日文庫)◆この後、延々と論争が続くが、決着はつかず。「無理ないと思います。なかにしさん自身がA型ですし、ぼくはB型ですから」。血液型の話はこのあたりがいい。