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2025年

【参院選2025・足元の課題】 農地の保全、農家任せ 「大規模化」では守れない

2025/07/07
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 「令和の米騒動」を受け、小泉進次郎農林水産大臣は農業経営の大規模化を進める考えを示している。経営効率を上げ、農家の所得向上やコメの安定供給を図る狙いだ。ただ、大規模化一辺倒で持続可能な農業を実現するのは困難と言えそうだ。

笹賀地区の住宅地にある水田。写真奥のほ場への進入路は幅2メートル未満のところもあり、大型農機の進入は困難だ

 松本市南部の笹賀地区は、奈良井川西岸の平地に東京ドーム64個分に当たる約300ヘクタールの水田が広がる。中山間地と比べれば栽培条件が良く、中には50ヘクタールの大規模経営を行う法人農家もある。同地で本年度、「農地保全」を目的とする「株式会社笹賀ファーム」(上條定社長)が設立された。
 笹賀地区はこの20年間、地元農家でつくる「笹賀営農組合」が、コメの減反・転作と経営集約化を条件とする国交付金の受け皿となり、組合員に分配することで小規模農家の経営を支えてきた。
 だが、高齢化や後継者不足で離農する農家が増加。離農者の水田は大規模農家が集約し、令和5年度には法人農家4軒で地区の水田面積の50・5%を占めるに至った。営農組合は今後、解散する方針を決めている。
 一方、地区内には古くからの農村集落の周辺などに、小面積や不整形の水田が点在する。農機の大型化や収益性の向上を図る法人農家にとって、耕作する合理性はない。こうした農地は、耕作放棄の危機にさらされている。
 笹賀ファームは今後、営農組合や、農機を共同利用する地区内の機械利用組合の役割を引き継ぎ、これら農地の耕作を担う。だが、営利法人の経営にはいくつもの壁がある。何よりも条件不利農地の収益性の低さを補えるかが焦点だ。高収益作物の栽培など、未経験の分野に参入しなければ活路は見いだせない。上條社長は「現在の農政だと『コメだけの農業は不可能』という結論になる」と話す。
 会社は上條社長と5人の役員が資本金を持ち寄って立ち上げた。「強い意志がなければ荒廃農地対策はできない」―。上條社長は静かに語る。地域の農地保全は地元農家の篤志で成り立っている。
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 20日投開票の参議院議員選挙に合わせ、足元の国政課題を見つめる。(随時掲載)