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2025年

戦争の記憶、次世代に伝えたい 山形村史談会が会報特集号発行

2025/09/13
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 山形村史談会は戦後80年の節目に合わせ、会報「郷土」の特集号を発行した。村内の戦争体験者の証言や、遺族の声、会員が研究した戦時中の村の様子などをまとめてある。戦争の実体験を語る世代が激減する中、貴重な証言を記録することで次世代に戦争の記憶を伝え、恒久平和が続くことを願って編集した。

戦後80年に合わせ体験者の証言などをまとめた会報特集号と史談会の会員

 証言は2人に協力を得て掲載した。昭和19(1944)年に旧満州(現在の中国東北部)に渡り、長野県報国農場で約7カ月間勤労奉仕をした山口元女さん(98)=下竹田=の証言は、山口さんが記録した手記を中心にまとめ、現地の様子を伝える写真も載せてある。
 戦中の国策として旧満州に入植した「満蒙開拓団」に一家で参加した鳥羽今朝夫さん(89)=上竹田=は、現地で父母・兄弟6人を亡くした悲惨な経験を証言。食料不足や感染症と闘い、10歳だった昭和21年に兄と2人でふるさとの旧錦部村(現・松本市四賀地区)に帰還した。戦中を「満州は広くて大きくて明日があると国策で進められた希望の大地は、我が鳥羽家にとって正に地獄の大地となった」と振り返る。
 遺族の声として村遺族会の百瀬克尚会長(81)=小坂=の経験を掲載し、シベリア抑留中に亡くなった叔父の遺骨が69年ぶりに自宅に戻ってきた経過を紹介した。インドネシア・ボルネオ島で戦病死した父親の遺骨は今も戻っておらず「今も戦没者の遺骨収集、鑑定が行われていることを思えば、戦争の悲惨な歴史は終わっていない」と結んでいる。
 特集号は全46ページで、20ページ程度の通常版に比べ大幅にページ数を増やした。編集を担当する事務局の直井雅尚さん(67)=下竹田=は「事実や経験を残し、戦争を知らない世代に継いでいきたい」とし、高野嘉敬会長(78)=上竹田=は「10年後の戦後90年ではこのような証言はほとんど得られない。記念碑のような会報になった」と話す。
 約100部を発行して会員へ配布するほか、村図書館や県内の図書館に配布する。