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2025年

「最期を自宅で」活動つなぐ がん治療中 医師の瀬角さん 松本で講演

2025/07/07
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 自宅で最期を迎えたいと望む患者のために、訪問診療を続ける医師・瀬角英樹さん(64)=松本市=が5日、松本市城北公民館で講演をした。瀬角さんは昨年8月、膵臓がんが見つかり手術を受けた。抗がん剤治療を続けながら現在も診療を担う。「僕がいなくなっても在宅でみんなを支える活動は残したい。頑張って、未来に向かって準備を整えていく」と力強く語った。
 瀬角さんは神奈川県出身で信州大学医学部を卒業した。病院勤務を経て、令和3年に「訪問診療クリニック樹」(松本市蟻ケ崎5)を開設した。24時間365日の対応で、がんの終末期の患者など220人をみとってきた。8割が自宅で最期を迎えた。
 医療者として「患者の立場に立つ」と言ってきたが、自分も患者となり「自分の苦しさ、命に対する思いは、その人にしか分からない。他の人がその立場に立つのはできない」と考えるようになったという。「でも想像はできる。ぼくは今、患者さんの思いを想像しながらそばで見ている」と心境を語った。
 家族、仲間、地域の支えに感謝し「残された時間の中で、この地域で役割を果たしたい。一日一日を積み重ね、伝えるべきことを残したい」と力を込めた。抗がん剤治療で、しびれが出た手を動かすために再開した趣味のギターを弾き、竹内まりやの「人生の扉」を歌って締めくくった。
 瀬角医師を招いて勉強会を開くなどして、4年前から交流を続ける城北地区住みよいまちづくり協議会福祉の部会が講演会を企画し、約50人が耳を傾けた。三村伊津子部会長は、涙をこらえながら「お礼は言いません。また来年同じようにここに来てください」と呼び掛け、会場から大きな拍手が起きた。

医師として患者としての思いを語る瀬角さん