2026.1.29 みすず野
2026/01/29
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年が明けて届く年賀状、寒中見舞いは年々少なくなっていく。それでも頂いたはがきは、ファイルに入れる。そこに書かれた文字は筆字であれ、ペン字であれ、書き手の表情を思い起こさせる。文字は不思議だ◆「もとより独創的な字を書く人は別だが、たいていの人はその時代の字を書くということもいえるらしい」と英文学者の福原麟太郎はいう(『福原麟太郎随想全集3』福武書店)。明治天皇、岡倉天心の字は明治の字だと◆米国初代大統領のジョージ・ワシントンの肉筆の手紙を、記念館のようなところで見る。それは英習字のような篤実な字で、私たち夫婦は年を取り、舞踏会へもうかがえなくなったという内容だった。「私も年を取ってこういう返事を、こんな篤実な字で書きたいと思ったことがあった」と振り返る◆それから三十数年が過ぎた。「年たち返る春とともに私も今やそういう老年に達しているのだ。誰か舞踏会への招待状をよこす人はないものか」と。学生運動で書かれた大学の立て看板の文字は、どこの看板も共通した書体だった。自分が書いた文字はわかる。昭和、平成、令和、さてどの時代の文字だろう。



