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2025年

松本波田道路、建設着々と 松本道路交通考第6部① 中部縦貫、災害時に不可欠

2025/11/18
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 日本のほぼ中央に位置する信州は、周りを八つの県に囲まれた内陸県で山岳地帯でもある。交通の便が悪いため、かつては「陸の孤島」と呼ばれた。先人たちは他県との活発な往来や災害に強い道づくりを目指して知恵を絞り、交通網の整備を図ってきた。中信地区で長い年月と費用をかけて整備が進められている大型の広域道路や松本市内の懸案事業の現状を報告する。

国道158号とアルピコ交通上高地線の線路をまたぐ新村高架橋の工事現場。橋台が完成し橋桁をかける準備をしている

 松本市を起点に北アルプスを越え、岐阜県高山市を経由して福井市に向かう高規格幹線道路が中部縦貫自動車道だ。計画によると全長約160キロ(県内は約35キロ)で、長野と東海北陸、北陸の各自動車道を結ぶ。
 松本市内では島立の長野自動車道から分岐して西に向かい、新設される中部縦貫道波田インターチェンジ(IC=仮称)までの「松本波田道路」(延長5・3キロ)の建設が進む。片側2車線の自動車専用道路で事業費は414億円、平成8(1996)年度に事業化された。完成時期は未定だが、用地取得率は今年3月末時点で94%に達した。同市新村と波田の境界には、松本波田道路の一部「新村高架橋」の橋台が立つ。高山市方面に向かう国道158号とアルピコ交通上高地線をまたぐ橋だ。近くの80代の女性は「できるのはいつになるのかね。造るなら早く進めて」と話した。
 一方、波田から西の松本市安曇地区の中ノ湯に至る27キロ間のルート案は示されていない。長野国道事務所は波田以西を「検討中」とし、国、県、市の関係機関で意見交換などを進める。
 国は国道158号で奈川渡ダム直下のカーブが連続する区間にトンネルと橋を新設する「奈川渡改良」を進める。工事は中部縦貫道の一部ではなく「国道の現道改良」(長野国道事務所)との位置付けだ。
 中部縦貫道完成後は、現行5時間かかる松本―福井間が3時間ほどに短縮される。福井県内は計画の7割、岐阜県内は5割が供用済みだ。長野県内は、平成9年12月6日に開通した松本市安曇の安房峠道路(安房トンネル)の2・3キロにとどまり、計画の1割に満たない。急しゅんな地形、連続するダム、現道との接続など厳しい条件が進ちょくの妨げとなっている。
 昨年1月の能登半島地震で北陸自動車道や上信越自動車道が通行止めとなり、北陸地方と関東甲信越を行き来する車が国道158号に集中した。中部縦貫道の早期完成が改めて注目された。太平洋側を震源域とする南海トラフ地震の発生も懸念されており、緊急時に救護や支援を支える道路の必要性が高まる中、県内区間の整備をどう進めるのか。先行する他県の関係者には「(進ちょくには)首長や国会議員など地域の熱量が重要」との声もある。先行きは、まだ見えない。

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