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宿場町の景観を後世に 塩尻の奈良井区が「ビジョンブック」作成へ

奈良井区民に対し、倉敷の重伝建地区の現状について語る中村さん

 塩尻市の奈良井区は今後の奈良井のありたい姿を「ビジョンブック」としてまとめる。14日夜、住民が主役のまちづくりを進める対話の場「奈良井ラボ」の本年度第1回を開き、先進事例を学んだ。奈良井と同様に重要伝統的建造物群保存地区(重伝建地区)に選定されており、奈良井と同趣旨で冊子を作った岡山県倉敷市美観地区の関係者を招いた。

 ビジョンブックは、住民や事業者が共存して歴史ある景観を後世に残すための理想像を共有する契機とする。具体的な内容は白紙だが、小嶋正則区長(68)は「奈良井で暮らす手引き書のような存在になれば」と説明する。
 奈良井ラボには区民ら約20人が参加した。講師は、倉敷の住民らでつくる倉敷伝建地区をまもり育てる会の中村泰典副会長(73)=倉敷市=が務めた。冊子は同会が住民や事業者に向けて令和4年、地区の歴史や商業活動上のお願いをまとめた。中村さんは編集委員を務めた。
 倉敷の重伝建地区には年間で、奈良井の約10倍の400万人前後の観光客が訪れる。中村さんは、ここ40年で少子高齢化が進み、外部資本の流入で地区全体が商業観光モール化していると指摘した。一方で住民の危機管理意識は薄く、「コミュニティーが崩壊している」と説明した。観光客過多のオーバーツーリズム問題を背景に、最近は地元事業者が自主組織をつくる動きもあると話した。
 令和3年度に始めた奈良井ラボは4期目で、ビジョンブックは昨年度に考案したキャッチコピー「町並みに生きる」を基にまとめていく。小嶋区長は「中の人(住民)も外の人(事業者や観光客)も重伝建を大事にする思いを持ち、皆が関わり盛り上げていく雰囲気をつくりたい」と話している。