連載・特集

2024.5.2みすず野

 松本市の市街地を歩きながら信号待ちをしていると、後ろの二人連れの話し声が聞こえた。日本語でないことだけはわかった。信号が変わって歩き出し、声の方を見ると、日本人と変わらない容姿だった◆外国語のうち、会話の意味は分からないが、話されている言語が中国語であるということだけはわかる。大学では中国語が必修課目になっていて、1課目でも単位を落とすと留年。怠惰な学生だったが、中国語だけは授業に出ざるを得なかった◆最も厳しかったのは中国人の女性が教える授業で、日本語は禁止。大きな高い声で次々に発せられる言葉は到底理解できない。それでも、授業を重ねるにつれて少しずつ大意がわかるようになったから不思議だ。もっとも今は何一つ覚えていない◆信号待ちの二人連れは縄手通りの店を楽しそうに巡っていた。中町の蔵造りの街並みや、緑町・上土町通り、いくつかの小路など市街地の通りは外国人によく合う。観光客は日本人でも外国人でも、地元の人が座らないような場所に腰を下ろす。そのことで街のかたちやたたずまいに気付くこともある。外国語が堪能なら聞きたいことはたくさんある。