「安価なグリーン水素の大量供給が目標」 信大特別栄誉教授・堂免一成さんに聞く
信州大学(本部・松本市旭3)の特別栄誉教授・堂免一成さん(72)は、二酸化炭素を排出せずに太陽光と水から直接水素をつくる光触媒を開発し、注目を集める。脱炭素に役立つ「グリーン水素」を、安価に大量供給することを目標に研究を進めている。実用化への取り組みや展望について聞いた。
―水素をめぐる状況は。
産業界の水素は主に天然ガス由来で、二酸化炭素を発生させるため「グレー水素」と呼ばれる。太陽電池を使った水の電気分解でもグリーン水素をつくれるが高価で、次の一手となるものが自分たちのやっている人工光合成の分野。半導体の微粒子を細工した触媒に太陽光を当てると水から水素と酸素ができる単純な方法で、効率が上がれば安くできる可能性は十分ある。
―研究の始まりは。
博士課程に進んだ時。自然界の光合成と同じようなことができたら面白いという興味本位だった。新しいテーマで教授になかなか認められず、粘った。博士号も取ったが、将来的に使い物になるとは全く思わなかった。
―進捗状況について。
飯田市で大規模な実証実験を予定し、触媒や水素と酸素を安全に分離する装置を改良中。順調なら来年度にも着手できるか。本来実用レベルの性能が出ていいはずの触媒で、そこに届かないのは何か大事なポイントを見逃しているのだろう。
―昨年のノーベル賞候補にも名前が挙がった。
実用化し、安い水素ができると証明されるまでは絶対にない。グレー水素と同程度の価格が最終目標で10年、15年はかかる。化石燃料が枯渇しても、安い水素を大量につくる技術があればエネルギー不足に陥らない。それが実現できたらもらってもいいかもしれないが、それまではない。イノベーションはいつ起こるか分からないので試行錯誤が面白かったが、最近はプレッシャーが極めて大きい。
―今後に向けて。
水素は肥料製造や原油精製など大量に使われ、今はグレー水素なので使い続けると気候変動がひどくなる。なるべく早くきれいな水素を供給できるようにしないといけない。
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堂免 一成氏(どうめん・かずなり)昭和28(1953)年、鹿児島県生まれ。51年東京大理学部卒、57年同大学院博士課程修了。旧東京工業大教授などを経て平成29(2017)年に信大へ。令和6年にノーベル賞の登竜門とされる「クラリベイト引用栄誉賞」を受けた。




