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2025年

松本城 大工事が始動へ 南外堀復元と天守耐震化 令和8年度中に基本設計完了

2026/01/01
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 松本市の松本城で今年、現在は埋め立てられている南側の外堀を復元する工事の基本設計が大詰めを迎える。幕末期の松本城の姿を可能な限り具現化することを目指す整備事業の一環で、市は国宝天守の耐震工事と併せて令和8年度中に基本設計を終える。天守の耐震工事は昭和30(1955)年の「昭和の大修理」以来の大工事となる見込みで、地域の「宝」である松本城の価値を高め、守っていく大プロジェクトが本格的に始動する。
 大正末期から昭和初期にかけて埋め立てられた松本城の南・西外堀の復元は菅谷昭前市長が平成19(2007)年に事業着手を表明し、臥雲義尚市長が引き継いだ。これまでに市は対象区域9283平方メートルの用地買収を完了し、ほとんどの建物が取り壊されている。これまでに投じた費用は約24億8900万円に上る。まず南側の外堀から復元に着手する。
 復元事業を巡っては平成29年度に鉛による土壌汚染が判明し、市は堀の範囲を平面で表示する「平面整備」に方針転換したが、31年の土壌汚染対策法改正を契機に、再び水をたたえた堀の実現を目指すことに。令和10年度の着工を目指すが、南外堀を含めて事業完了までの年数は現時点では見通せていない。
 国宝天守の耐震補強は令和10年度以降に着工する。天守と月見櫓、辰巳附櫓、渡櫓、乾小天守の五つからなる天守上部構造全体を鉄骨補強する工事は国宝5城で初めて。工事期間中は天守に入れなくなるため、観光への影響が心配されるが、臥雲市長は「工事期間中に違った価値を提供できないか庁内の関係課で検討を進めていく」と話す。
 昭和の大修理で観光用に架けられた埋橋は文化財として整備される対象ではなかったが、観光客の撮影スポットとして人気があったため残す方針に。昨年5月に欄干の修繕や塗装などの補修工事を終え、写真スポットとして復活した。
 令和5年度に着手した堀のしゅんせつは令和8~9年に太鼓門前の土橋の北側と南側の外堀で実施する。松本城公園にあった旧市立博物館は昨年10月末までに解体工事を終え、跡地は広場としてイベントなどで活用していく方針だ。
 市松本城整備課の竹内靖長課長は「先人たちが守ってきた松本城を次世代につなげていくため、整備計画を着実に進めていきたい。それと同時に幕末期の松本城の姿を可能な限り復元することで新たな価値をつくりたい」と話している。

松本城南・西外堀の復元区域。南外堀から復元に取り掛かる