塩尻・奈良井宿の複合施設に建築賞 古民家再生を評価 BYAKU Narai

築200年以上の造り酒屋の建物の外観を保ち、宿泊施設などに変えた塩尻市奈良井の小規模複合施設「BYAKU Narai」に、国内で最も権威ある建築賞の一つ「BCS賞」が与えられた。既存部分と改修部分の見分けがつかないほど丁寧に施された改修が評価された。大規模な公共施設が大半の受賞作品の中で、古民家を再生した「BYAKU」は異彩を放つ。
建築主のソルトターミナルと市森林公社(いずれも宗賀)、設計者の竹中工務店(本社・大阪市)、施工者の北信土建(同・長野市)が表彰された。「ソルト」には竹中工務店と森林公社が出資している。
創建後に何回も改築したことから、改修で解体を進めると図面と違う部分が出てきたといい、その都度、プランの変更を迫られた。建物のゆがみを直した上で、再利用するため外した建具を付け直そうとすると、うまくはまらないこともあった。
文化財復元で実績がある北信土建中信支店の百瀬哲二支店長は「既存の建物から、新たな価値を生み出す工事だった。受賞は誉れ。市や近隣住民の協力があってこその施工で、感謝している」と話す。
森林公社は、地域の象徴である建物に愛着を抱く地元住民が本来の施主だとみる。古畑耕司理事長は「集落が守り続けてきた建物への思いを、未来へつなげることを具現化できた。それが評価されたのがうれしい」と言う。風呂の燃料に木曽地域の間伐材を使うなど、森林資源の利用サイクル実現を図っている。
竹中工務店まちづくり戦略室の高浜洋平さんは企画・設計に当たり、ソルトターミナル取締役として事業主の立場でも携わった。「地域の(歴史の)文脈に寄り添い、いいところを拡大しようと考えた」と説明する。古民家再生での受賞を「世の流れの転換点だと思う。日本固有の文化や、地方にある良質の建物といったストックを、どう生かしていくかが問われる、これからを示唆すると評価された」と受け止める。
BCS賞は日本建設業連合会の主催で66回目。事業主と設計者、施工者の「三位一体」で作品が成立することを重視している。



