塩尻大門・三平食堂 惜しまれ閉店へ 家族で切り盛り65年 夜間の最終営業 12月30日まで

塩尻市大門七番町の三平食堂が年内で閉店する。昭和36(1961)年の開業以来、大門地区の変遷を見守りながら街行く人、働く人の胃袋を満たしてきた。店主の丸山武紀さんが11月に亡くなり、長く店を支えてきた妻の八重子さん(83)も高齢になったため惜しまれつつ、のれんを下ろす。休業していたが23日から30日まで夜間に最後の営業を行う。
三平食堂は八重子さんの母・節子さんが開業した。店名は節子さんの夫・國男さんの恩人の名前に由来する。当時の大門はまだ飲食店が少なく、節子さんが松本で料理を習い、ラーメンとうどんを提供した。長く人気メニューとなってきた、にぼしと昆布を使ったあっさり味のラーメンは、開業時から同じ味だ。当初の値段は1杯60円で、塩尻駅を利用する高校生らでにぎわった。
高度成長期は大門商店街にとっても最盛期で、買い物や映画、銭湯を楽しむ人の来店も増えて大忙しとなった。宴会場を設けてからは、景気の良い時には、国鉄や昭和電工、市役所など近くで働く人の宴会が連日連夜続き、店はさらに繁盛した。
昭和57年に今のJR塩尻駅が現地に移ってからは、街のにぎわいも徐々に落ち着き、来店も常連客が中心となっていった。近年は武紀さん、八重子さんとも体の無理が利かなくなったことから夜間のみの営業となり、11月からは休業していた。八重子さんと、店を手伝ってきた長女の飯田三恵さん(55)が相談して、1週間ほど前に閉店を決めた。飯田さんは「続けたい気持ちもあったけれど、父が亡くなったことが区切りだと思った」と話す。
八重子さんは、ラーメンの値段が60円から700円になったことに店の歴史の長さ、世の中の変化の大きさを感じると、開業からの出来事を振り返った。「忙しかったけれど、いい時代に店をさせてもらった。お客さんもよい方ばかり。ありがとうございましたと伝えたい」と感謝する。
営業は30日まで(28日は休み)。午後5~9時。問い合わせは三平食堂(電話0263・52・1071)へ。



