野麦峠越えの「製糸工女」が労働遺産に 日本労働ペンクラブが認定へ
労働問題に詳しいジャーナリストや研究者らでつくる日本労働ペンクラブ(事務局・東京都)は17日、明治から昭和初期に飛騨地方の貧しい少女たちが野麦峠を越えて県内の製糸工場に働きに出て、殖産興業の近代化を支えた歴史を伝える遺産を「労働遺産」に内定したと発表した。旧野麦街道、製糸工女の峠越えの苦難を伝える石碑と石像(岐阜県高山市)、工女宿宝来屋(松本市島立)、野麦峠まつりを認定する。
松本市出身の作家・山本茂実(1917~98)が工女の実態を描いた記録文学『あゝ野麦峠』に関連し、遺産の登録タイトルは「あゝ野麦峠、殖産興業を支え近代化の礎となった製糸工女の故郷飛騨への道」とした。
松本市奈川地区の旧野麦街道に面した位置にあった工女宿宝来屋は、高山方面から主に岡谷・諏訪地方へ製糸労働のため往来した工女の宿で、昭和58(1983)年に松本市島立の市歴史の里に移築された。野麦峠まつりは工女たちの苦労をしのんで当時の衣装で野麦街道を歩く行事で、奈川地区の主催、高山市高根町の協力で毎年5月に開催している。
労働遺産認定事業は働く現場の歴史を後世に伝承することを目的に令和4年度に始まった。会員の申請を受けた認定委員会が審査し、毎年2件ほどを認定している。野麦峠まつりは無形遺産として初めての認定となる。
松本市役所で記者会見した日本労働ペンクラブ代表代理で認定委員会委員長の西澤昇治郎さん(79)は「労働遺産を広く社会に認知させ、働く人の権利を継承したい」と述べ、幹事の浅井茂利さん(68)は「先人の努力の積み重ねで今の日本があることを再認識する契機としたい」と話していた。
来年1月13日に都内で開く総会で正式決定し、松本市や野麦峠まつり実行委員会などに認定証が交付される。認定された労働遺産は日本労働ペンクラブのホームページで公表される。




