穂高の古民家プロジェクト 等々力家の長屋門に客室 市文化財活用の先行例に
空き家となっている安曇野市穂高の古民家「本陣等々力家」を宿泊中心の複合施設として活用する官民連携プロジェクトについて、市は事業計画案をまとめた。市指定有形文化財の長屋門を客室として改修するほか、世界的建築家の伊東豊雄さん設計のレストラン棟を新築。観光客や農家、学生らが集う場も設け、魅力的な観光・交流拠点に再生する方針だ。
市は主屋、土蔵など9棟で構成する江戸後期建築の本陣等々力家(5674平方メートル)と、元ワサビ店の古民家など隣接する2棟を年度内に取得。全面的に改修し、旅館業・扉ホールディングス(松本市)など3社の共同事業会社に貸し出す。
計画案によると、等々力家の建物群は宿泊エリアとし、土蔵や主屋の裏座敷を丸ごと客室にする。間口36メートルで刀の傷跡が残る平屋切り妻造りの長屋門も、市有形文化財の価値を損なわない手法で改修して客室2部屋を設置。文化財を活用しながら残す先行事例とする。
等々力家の隣には宿泊者以外も利用できるレストラン棟を新築。伊東さんの設計で、北アルプスを眺めながら安曇野の食材をふんだんに使った食事を楽しめる空間をつくる。
元ワサビ店の古民家は「文化・交流促進エリア」として再生する。マルシェや料理教室の開催、地域文化や観光を学ぶ学生の実践拠点、穂高地域を周遊する外国人観光客への情報発信といった活用を、大学関係者などと構想している。
市観光課は「来訪者が満足できる魅力的な観光拠点だけでなく、移住や雇用などへの波及効果も図れるスケールの大きな事業になる」としている。
総事業費は約9億9000万円。うち5億円は国の交付金を活用し、残りは市が負担する。来年度に改修工事を始め、令和11年度中の完成を目指す。
市は19日午後7時から、同プロジェクトの市民説明会を穂高交流学習センター・みらいで開く。参加自由。




