穂高の稲田智春さん宅 亡き長女 思い出すミカン 大切に育て6年 「みほ、今年も実ったよ」
2025/12/09
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安曇野市穂高柏原の稲田智春さん(86)が自宅の庭で育てているミカンの木に実がなり、庭を彩っている。今年は摘果しなかったところ、予想以上の数が実り「寒い穂高でも立派に育つとは思わなかった」と驚く。長女のみほさん(享年52歳)が病に伏した6年前の秋に購入してからずっと大切に育ててきた。
日当たりの良い南庭で、鉢から伸びた高さ1メートル余りの木に30個ほど付いた。大きい実は直径10センチもあり、ずっしりと枝をしならせる。木に負担をかけないように毎回摘果し、実を10個に調整してきたが、今年は手が回らず「実がならないと思っていた」と話す。
苗を手にしたのは令和元年。当時、市役所に勤めていたみほさんに病気が見つかり、入院先に通う智春さんは「余命あと少し」と告げられた。
どうしようもない悲しみの中、院内の園芸店でふと目に入ったのがミカンとユズの苗だった。「娘が元気になるように育てて心を落ち着かせようと思った」と振り返る。その年の11月にみほさんが亡くなった後も大事にしてきた。
冬は鉢を室内に入れていたが、3年目に根が張って動かせなくなり、庭で育てることに。冬はわらで囲い、夏は米のとぎ汁や油かすをやって管理した。寒さやチョウの幼虫の食害にも負けず、春には真っ白な花を咲かせた。
稲田さんは「今年も立派な実がなったよと仏壇に供えたい。自分が元気な限り、枯らしちゃいけないね」とほほ笑む。




