安曇野在住の日本画家・岸野圭作さん 日展で最高賞の内閣総理大臣賞

安曇野市三郷温の日本画家・岸野圭作さん(72)が、国立新美術館(東京都)で先月開かれた第118回日展の日本画部門で、最高賞の内閣総理大臣賞を受賞した。地元では、安曇野市美術館(豊科)で来年5月2~31日に予定される巡回展で公開される。
日展は日本最大の総合美術展覧会で、日本画、洋画、彫刻、工芸美術、書の5部門がある。岸野さんの受賞作「微風」(150号)は、葉の群れのみを深い赤と黒で描いた作品。「葉群れの上を吹き渡るかすかな風の動きが植物の生命感を伝え、光と影の強烈なコントラストが作品に深みをもたらした秀作」と評価された。自宅周辺を散歩する日常に体が感じ取り、脳裏に築かれた風景を昇華させた。
和歌山県出身。造り酒屋の次男として生まれ育ち、掛け軸を掛け替える手伝いがあったことが、日本画に興味関心を持つきっかけになった。首都圏の私立大学へ進学するも、画業への志から中退し、日本画家の加藤東一氏に師事。昭和51(1976)年、23歳で日展に初入選した。
以後落選が続くと迷いも生じたが、「物事うまくいったから続けるのか、うまくいかなければやめるのか」と問う父親に背中を押された。ベッドに横たわる父の死の間際を描いた「しじま」は55年に日展特選を受賞。平成元(1989)年の2回目の特選を経て7年に会員、18年に評議員になった。
大学時代の学生寮で出会った松本市出身の先輩との縁に導かれ、家族と三郷で暮らし20年になる。穂高や堀金、長野市で指導を手掛けながら鍛錬する。「楽しく、自由に自分の思うように筆が動くのがいい。ただそれが最も難しい」と話す。
日展事務局によると、過去10年間で最高賞の大臣賞を受賞した中信地区の関係者には、令和元年に受賞した南木曽町出身の彫刻家・勝野眞言さん=埼玉県在住=がいる。
安曇野市出身の漆芸術家・髙橋節郎(1914~2007)は昭和35年、松本市出身の書家・上條信山(1907~97)は同44年のそれぞれ大臣賞受賞者。



