旧松本高等学校校舎 ヒマラヤスギが管理に支障 落ち葉の影響で外壁腐食被害 市教委、両立の保存模索
松本市県3の国重要文化財旧松本高等学校(あがたの森文化会館)の校舎と、周囲に立つヒマラヤスギの保存の両立が課題になっている。あがたの森公園に立地し、文化薫る街の象徴的な景観を形成している一方、ヒマラヤスギの落ち葉などが校舎の健全な保存や管理に影響を及ぼしている。建物を管理する市教育委員会は文化庁の指導を受けながら、景観を損なわない保存のあり方を模索している。
建物は本館が大正9(1920)年、講堂が同11年に完成した。戦後、信州大学文理学部の校舎を経て昭和54(1979)年にあがたの森文化会館として開館し、平成19(2007)年には国重文に指定された。公園内のヒマラヤスギも建物の建設と同時期に植えられたと考えられ、樹齢は100年余りになる。
ヒマラヤスギは樹高が約20メートルに達し、本館の軒高約13メートルを上回る。建物の屋根に葉や花が落ちると雨どいが詰まり、あふれた雨水が外壁を腐食させるなどの被害が発生している。市は高所作業車を使った屋根や雨どいの清掃を年2回実施しているが、本館中庭に通じる車道がないことなどから作業ができるのは一部に限られている。
市教委は今夏、文化庁などと今後の整備事業について協議。建物に近接する危険木の伐採・剪定や雨どいの改修について緊急性が高いと判断した。未設置の消防設備の整備と併せ、公園を管理する市公園緑地課などと調整しながら「早期実施を目指す」とする。
校舎内には冷房設備がない部屋があるなど、生涯学習施設としての活用にも課題がある。市教委は文化財保護法に基づく保存活用計画を本年度中に見直し、国の補助を得ながら施設全体の整備を検討している。市教委生涯学習課は、これまでの校舎保存運動の経緯も踏まえながら「建物も樹木も両方残す方策を考えたい」としている。




