漆工町・築70年の旧漆器店 リフォームが国交大臣賞
塩尻市木曽平沢の改修住宅が、「第42回住まいのリフォームコンクール」(公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター主催)で、最高賞の国土交通大臣賞を受賞した。「漆工町」として国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された町並みを構成する建物で、住宅を所有する1級建築士の川島宏一郎さん(52)が設計した。

旧中山道沿いで、昭和33(1958)年に建てられた木造2階建ての旧漆器店。令和元年10月の台風19号の浸水被害により床が落下しており、解体で景観が崩れるのを懸念した川島さんが購入し、松本市から家族で移住し再生に取り組んだ。
建物の正面はタイル張りだったが、2階部分がせり出す江戸時代の「出し梁造り」をモチーフに格子を付けた外観とし、周囲の景観と調和させた。格子の設置は防火対策も兼ねる。近隣の製材所に残されたサワラの板を焼いて外壁に用い、断熱材や設備にもリサイクル材料を使用し、太陽熱温水器を設置。昔ながらの「通り土間」の構造を生かし、薪ストーブの空気が家中に循環するようにした。
令和4~5年に施工し、市の伝統的建造物群保存地区保存事業補助金や木質バイオマス利用設備設置補助金を活用し、工事費には1500万円かけた。川島さんが講師を務める松本市の県松本技術専門校の学生も携わった。
コンクールの応募総数は296件。川島さんは、審査では「従前よりも一層(重伝建の)町並みに貢献できる外観を実現」し、「設計姿勢の大元に『もったいない精神』がある」などと評価された。
工事後は自宅と事務所として使うが、いずれは1棟貸し形式の民宿にする計画だ。川島さんは「受賞は率直にうれしい。もったいないが基本にあり、街道文化を知ってもらうためのまちづくりを進めたい。100年、200年と家自体を継いでいく気持ちを伝えていきたい」としている。



