松本市立病院が分娩廃止 産科体制の問題改善難しく
2025/10/16
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松本市立病院(波田)を運営する市病院局は15日、産科診療の中の分娩機能を廃止することを決めた。産科体制の構造的な問題の改善が難しいことと、将来的に医師や助産師の確保が厳しくなることを踏まえた措置という。産科の診療機能は残す。分娩廃止後は、共通診療ノートなどを用いた「産科セミオープンシステム」を活用し、分娩を行う近隣の医療機関と連携して、市西部地域での出産予定の妊産婦を支援するとしている。
市立病院は4月に発生した分娩時の医療事故を受けて7月から分娩を中止し、今後の方針を院内で検討してきた。今月7日に市病院局で廃止の方針を決め、15日の市議会厚生委員協議会で了承された。
市病院局は分娩の廃止につながった医療事故の背景について「10年前は500件を超える分娩があったが昨年度は138件まで減少し、現場での実践的判断能力が低下した」ことなどを挙げた。
市立病院は建物の老朽化による新病院の建設計画が進められており、令和10年3月末の開業を目指して現在は実施設計の段階に入っている。ただ、産科診療の見直しが浮上したことで実施設計は休止されている。今回の分娩廃止の決定で計画の見直しを余儀なくされ、新病院の開業時期は遅れる可能性が高まった。市病院局は近く予定される市議会病院建設特別委員会に、今後の進め方を報告することにしている。
分娩の廃止について北野喜良病院事業管理者は「苦渋の決断だが、一つの区切りとして地域密着型の病院づくりをしていきたい」と話した。臥雲義尚市長は15日の定例記者会見で「重大な医療事故を踏まえて重い決断をした。基本計画の見直しも速やかに行っていく」と述べた。
