豊科の轟家住宅 市有形文化財に 江戸時代の主屋など 市の審議会が答申
安曇野市文化財保護審議会は15日、同市豊科南穂高で江戸時代に大庄屋だった「轟家住宅(質屋)」(個人所有)を、市有形文化財に指定するよう市教育委員会に答申した。主屋と土蔵の2棟が対象で、「本棟造りの民家の基本形を一部に含みつつ、時代に合わせて発展させていく過程を伝える良好な資料」とした。市教委10月定例会で決定される。
市教委によると、主屋は江戸後期の建設と推定される。大庄屋を務めた宝暦10(1760)年~天明2(1782)年に建設された可能性が高い。江戸末期~明治前期には、家業の養蚕や家族構成の変化に応じて増改築を加え、平面規模(間取り)を拡大した。質屋は屋号だという。
主屋は木造平屋(一部2階建て)で本棟造りの特徴的な外観をよく残している。本棟造りは土間を除いて6部屋が典型的だが、轟家住宅は14部屋と「間取りは本棟造りの基本形から大きく発展した形式」をしている。主屋に付属する門塀や屋敷林なども安曇野の歴史的景観を伝える重要な構成要素という。
土蔵は2棟を連結した2階建て。北側は墨書から明治3(1870)年の建設で、南側は江戸後期の建設と推定されている。
市教委が今年3月に同審議会に指定を諮問した。市文化財保護条例で定める建造物の指定基準のうち、「流派的または地域的な特色が顕著なもの」に該当する。同審議会は答申書の中で「市指定文化財として適当であると認める」とした。
同住宅は平成27(2015)年に公開された俳優・土屋太鳳さん主演の映画「orange―オレンジ―」の撮影で活用されたという。外観だけは見学可能で、主屋内部は来年度からの一般公開を予定している。
市指定文化財としては159件目で、このうちの有形文化財(建造物)としては31件目になる。昨年は「清澤洌文庫」が歴史資料として指定された。
