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2025年

火山と共生 教訓を糧に 御嶽噴火災害 あす11年 風化防止へ活動に力 自然や文化 魅力発信も

2025/09/26
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 火山災害で戦後最多の死者・行方不明者63人を出した平成26(2014)年の御嶽山(3067メートル)の噴火災害から、27日で11年がたつ。登山者を守るシェルターなどのハード整備は一段落。御嶽山を巡る官民の動きは、記憶の風化防止や防災啓発に軸を移している。県が創設した御嶽山火山マイスター制度の認定者、山麓地域の御嶽山ビジターセンター(VC)などが、それぞれの立場から取り組みを進めている。

 御嶽山火山マイスター制度は平成29(2017)年度に創設。昨年度は8期生6人が新たに認定を受け、マイスターは30人を超えた。有志でつくる御嶽山火山マイスターネットワークは、登山口での安全装備の啓発、火山の知識を学ぶワークショップなど幅広い活動を展開する。火山の怖さをしっかりと伝え、被災の記憶・経験を継承するとともに、豊かな自然、歴史、文化といった魅力も発信しながら「火山との共生」を考えてもらう。
 マイスター8期生で王滝村出身の島尻由美子さん(57)は「亡くなった方への慰霊の気持ちを胸に、災害を教訓として生かしていく」と決意を語る。
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 木曽町の御嶽山ビジターセンター・さとテラス三岳は本年度、これまでの指定管理方式から町直営になった。一番の変化は、交流スペースを積極活用してさまざまなイベントを企画し、これまで観光客に比べて少なかった地域住民の誘客につなげていることだ。
 学芸員の伊藤幸穂さん(51)を中心とする運営チームが、地元作家の絵画展や音楽演奏会などを誘致し、ほぼ切れ目なく何らかの企画を開催。それを目当てに地元客が訪れ、噴火災害や御嶽山の歴史・文化を紹介する展示コーナーも見学していく―という流れをつくり出している。
 今夏には、遺族らでつくる「山びこの会」が写真展を開催。発災前後に山頂で何が起こったのかを伝える写真の数々を多くの地元客、観光客が見学した。
 伊藤さんは今後の施設づくりに向け「関係者の意見を聞きながら、いろいろな人が集う場所にしていきたい。それが噴火の記憶を伝え、火山防災の意識を広めていくことにつながっていく」と語っている。

御嶽山火山マイスターネットワークのニュースレターを手に、今後の活動への決意を語る島尻さん