山形村中大池のアカマツ巨木 惜しまれ伐採へ
山形村中大池の「中大池上條姓共有墓地管理会」は22日、墓地内にある幹回り2.5メートル、高さ約10メートルのアカマツの巨木を伐採するため、魂抜き法要をした。墓地を所有する51軒の誇りで、村内に知られた銘木だが、枝が空洞化して落下し危険なことから被害が出る前に伐採を決めた。子供の頃から親しんできた12人が集まり心の中でわびながら別れを惜しんだ。

アカマツの前に設けられた祭壇前で、宗福寺(上大池)の務台孝尚住職が読経し、参加者が手を合わせた。上條善清会長(81)は「(先祖代々の)思いがこもった木。魂抜きをしなければとても切れない」とあいさつした。会員の上條明昭さん(91)は「子供の頃、すでに立派な大木だったから少なくとも樹齢100年以上。5年ほど前に伐採された、近くの『白衣観世音』の松と並ぶ銘木だった」と残念がった。松の枝が墓石の上に陰を作っていたことから「切ってしまえばご先祖さまは暑いだろう」と話す人もいた。
会はアカマツの保護に向けて松枯れ防止薬剤注入や栄養剤散布をしてきたが、3月の彼岸の先祖祭前に上條会長が墓地を訪れたところ、長さ3・7メートル、幹回り26センチの大きな枝が落ちているのを発見。中が空洞になっており、樹木医に相談して養生してきたものの枝枯れが進んでいるらしいことが分かった。4月に臨時総会を開いて会員に伐採について聞いたところ、6割を超える人が伐採に賛成した。
上條姓は甲斐(山梨県)から山形村に移り住んだといわれ、墓石には戦国時代に甲斐を治めた武田家の家紋「武田菱」が刻まれている。会員の中には「先祖と今を結ぶ松」と伐採に慎重な意見もあるが、上條会長は「少子高齢化で墓地を管理する人が減っている。人や墓石に被害が出てからでは遅い」と苦渋の決断に理解を求めた。
伐採は10月15日を予定している。