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2025年

聴神経の腫瘍摘出→人工内耳植え込み 信大病院が同時手術に成功、聴力回復

2025/09/23
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 信州大学医学部付属病院(松本市旭3)は22日、耳から脳につながる聴神経の腫瘍で聴力を失った県内の70代女性に、腫瘍摘出と人工内耳植え込みの手術を、国内で初めて同時に行い成功したと明らかにした。担当した医師は「両耳の聴力を失った患者にとって福音となる」と成果を強調した。

記者会見に出席した金谷医師(右)と吉村医師
記者会見に出席した金谷医師(右)と吉村医師

 同病院脳神経外科の金谷康平医師(45)と耳鼻咽喉科の吉村豪兼医師(44)が同日、院内で記者会見を開いて発表した。
 女性の腫瘍は令和4年8月までに県内の別の医療機関で確認され、術前には約3センチに肥大。20代で患った左耳の突発性難聴と合わせて両耳の聴力を失っていた。7月、右耳の聴力回復を目指して開頭手術を行い、金谷医師が腫瘍の摘出を、吉村医師が特殊な電極を用いた聴神経機能のモニタリングと人工内耳の植え込みを担当した。モニタリングにより聴神経への負担を抑え、通常の腫瘍摘出術では失われる聴神経の機能を維持することができた。約9時間の手術で腫瘍の7割を摘出し、人工内耳のうちインプラントと呼ばれる部分を植え込んだ。女性は12日後に退院。プロセッサーと呼ばれる人工内耳の体外機を装着することで、現在は聴力が回復し、日常会話が可能になったという。
 これまでは3センチ以上の大型腫瘍の摘出は聴力の温存が不可能に近いと考えられていたが、脳神経外科と耳鼻科の協力で新たな治療法につなげることができたという。金谷医師は「脳外科と耳鼻科の協力で患者のQOL(生活の質)を落とさない未来が来るといい」と期待を語った。