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2025年

旧制松高卒業生の作家・辻邦生さん 23日から松本で作家の原点に迫る企画展

2025/09/23
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 旧制松本高等学校卒業生の作家・辻邦生さん(1925~99)の生誕100年を記念した企画展が23日から、松本市県3の旧制高等学校記念館で開かれる。作家活動の原点と本人も振り返った松高時代に焦点を当て、当時の日記や恩師との交流、1年後輩で生涯の友となった作家・北杜夫さん(1927~2011)との親交などを振り返る資料約30点が並ぶ。11月30日まで。
 辻さんは昭和19(1944)年に松高へ入学し、留年を重ねて5年間松本で読書や思索にふけり、友人と語り合った日々が作家の原動力につながったという。企画展は、学習院大学で長くフランス文学を講じた縁から約6万点の資料を所蔵する同大学史料館(東京都)が、ゆかりのある7カ所で順次開催している。
 生涯多岐にわたる思考をしたため続けた日記は入学翌年に書き始め、鬱屈した思いなどが記された数冊を展示。終戦間際に勤労動員先の友人のために発行した寮雑誌「思誠」も紹介している。北さんに宛てた書簡コーナーでは、長編小説『楡家の人びと』を発表前に読み聞かせてもらったことへの喜びや求められた批評を記したはがきなどから、深い信頼関係がうかがえる。
 22日に内覧会が開かれ、解説した史料館学芸員・冨田ゆりさんは「松本は、彼が後になって気づく幸福が育まれた場所。作家になる前の姿も感じ取ってもらえれば」と話している。入場無料で開場は午前9時~午後5時。月曜日(祝日の場合は翌日)は休館。

(※辻はしんにょうに点2つ)

松高時代の日記などが並ぶ会場