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2025年

戦争の罪深さを高校生が発信 県ケ丘高の滝沢葵さんが当時の写真のカラー化に力

2025/09/20
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 松本県ケ丘高校国際探究科3年生・滝沢葵さん(18)=安曇野市豊科=は、3年前の広島訪問をきっかけに教科書では分からない戦争の実態を調べたり、同世代が関心を向けるような発信をしたりと積極的に活動している。戦争経験者が少なくなる中、未来へ継承する担い手として「考えてもらうきっかけをつくりたい」と奮闘している。
 中学校3年生のときに安曇野市の広島平和記念式典への派遣事業に参加。平和記念資料館を見学し、被爆者の写真に衝撃を受けた。皮膚が焼けただれて垂れ下がった人、目が飛び出した遺体など「本当にこんなことが起きたのかと、恐ろしくなった」。同時に、全てがなくなった広島の街にはビルが立ち並び「戦争の痕跡は消えていく」と実感した。
 同じころ、地元の安曇野で育ち特攻で犠牲となった上原良司(1922~45)に関する講演を聴いたことも戦争への関心を高めた。高校はフィールドワークが盛んで自分のテーマを掘り下げられる探究科へ進学した。
 入学すると「運命的に」戦時中など近現代史を専門とする担任教諭の助言を受け、鹿児島県の知覧特攻平和会館などを訪問。善光寺の南太平洋慰霊団に加わり、個人で目的地を決められる学校の海外研修に位置づけてサイパン・テニアン島の戦跡も巡った。
 ほぼ同年代の特攻兵が家族にしたためた遺書に「周りの人まで苦しめ、生活にも影響を及ぼす」、南の島の崖に残る生々しい砲弾跡に「島の風土まで壊してしまう」と戦争の罪深さを思った。
 「松本ユース平和ネットワーク」などの校外活動にも参加し、昨年再び広島平和記念式典に参列。学校の個人探究テーマを模索する中、滞在中にカラー化した戦前・戦中写真の展示を見かけ「より自分に引き寄せて考えられる」と松本版の取り組みを決めた。地域の写真を集めてAI(人工知能)でカラー化し、松本市中央図書館に展示すると反響があった。
 継承に向けた活動は今後も続ける。「最初に広島で受けた衝撃は自分の人生を変えるほど大きかった」と振り返り、「体験した人がどんどんいなくなる中、どう次につないでいくか考えていきたい。僕たちを含めこれから生まれてくる人たちも繰り返さないように」。

地域の戦前・戦中の写真をカラー化、展示した探究活動について話す滝沢さん