マイナカード更新で旧カードの扱い、自治体で違い 回収して処分か、希望者に返還か
平成28(2016)年1月の発行開始から、10年の有効期限が満了するマイナンバーカード本体の更新が始まっている。カードを切り替える際、旧カードを法律に従って厳格に回収する一方、必要な処理をした上で本人に返還するなど柔軟な対応事例もあり、自治体の判断が分かれている。

カード本体は発行日から10回目(18歳未満は5回目)の誕生日が有効期限だ。有効期限の3カ月前から更新手続きができる。発行初年は成人年齢が引き下げられる民法改正前で、当時20歳以上の人の初回更新が始まっている。
「行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(マイナンバー法)17条には、カードの有効期間が満了した場合「住所地市町村長に返納しなければならない」とある。
松本市はこれに沿い、新カードは旧カードと交換で手渡す。例外は認めていない。回収分は施錠して保管し、数日以内に機械で写真や文字が識別できない程度に裁断、産業廃棄物として処分する。個人情報の取り扱いを懸念する市民から「きちんと処分したか」との問い合わせや「目の前で粉々にして」との申し出もあった。カードには情報集積のIC(集積回路)チップほか、氏名、生年月日、性別、住所、顔写真、個人番号が載ることから、臼井美保市民課長は「万が一の情報漏えいや悪用防止のため、カード全面が分からない状態に処理している」と説明する。
一方、塩尻市は「原則回収」で溶解処分しつつ、国の技術的助言に基づき、カードのICチップに穴を開け希望者に返還する。総務省発出の「個人番号カードの運用上の留意事項」(平成27年9月)の市町村窓口対応で「ICチップ部等にパンチで穴を開けること等により、記念品としてカードを保有することを認めることができる」に基づく。塩尻では月2、3件希望があり、成長の証しとして子供のカードを手元に残したい親が主だ。上條紀子課長は「ただ、取り扱いは十分に注意してほしい」と呼び掛ける。安曇野市も原則回収して裁断・焼却処分するが、希望者には塩尻と同様データが読み取れないようにして返還している。
総務省自治行政局マイナンバー制度支援室は「自治体の判断に任せている」とする。更新でも旧カードがない場合は、有効期限満了に伴う無料更新が有料化される。各自治体は令和9年度が1回目の更新のピークとなると見込む。