職人技!漆塗りシフトノブ開発 デコトラユーザーの受注見込む
木曽漆器の技法で作ったトラック向けのシフトノブ(変速機を操作するレバー)が完成した。業務用家具製造の庄太郎(塩尻市贄川)と、トラック向けのアクセサリーやパーツ製造のジェットイノウエ(茨城県常総市)の協業で開発し、塩尻市木曽平沢の職人が製作する。きらびやかな装飾を施す「デコトラ」のユーザーからの受注を見込んでいる。

長さ10センチ、直径4・2センチの木製で、既存のジェット社製品を漆塗りで飾った。7月に塩尻市役所で、試作品4点が披露された。
ラメ状の表現・梨子地と、細かい蒔絵で昇り竜、木槌を描いたものがある。ジェット社のグループ会社の公式ユーチューブチャンネルに出演しているトラックドライバー・香穂さんが好きな模様「鯉と牡丹」をあしらった品も披露された。
庄太郎が、塗師の西野孝章さん(56)=西野うるし工房、蒔絵師の手塚希望さん(34)=手塚万右衛門漆器店=に製作を依頼した。西野さんは「最低でも4、5回は塗り重ねる」、手塚さんは「曲面がきつく、筆で描くのに苦労した」と話す。
庄太郎の宮原勝弘社長が持つトラックをデコトラ化する際に、ジェット社のグループ会社に持ち込んだ。宮原社長が漆器の会社を営んでいることを、ジェット社が知ったのが協業のきっかけになった。
デコトラは日本独特の文化として海外でも知られる。ドライバーには日本情緒を好む人も多く、伝統技法である漆器との相性が良さそうだ。試作品に触れた百瀬敬市長は「こういう所から、木曽漆器が広がることを願っている」と歓迎した。
ジェット社の大久保正道課長は「こだわりを持って飾るドライバーが多い。その一部として手に取っていただければ」と期待する。宮原社長は「いろいろな人に関わってほしいと考え、西野さんと手塚さんに製作を頼んだ。いい出来になった。産地全体で木曽漆器を盛り上げたい」と話した。
漆塗りシフトノブは受注生産で、価格は税込み5万円から。施す蒔絵などによって価格が変わり、フルオーダーの“一点もの”ができる。年内の受注開始を目指す。