麻績・聖博物館の記録保管 宮下喜光さん、父の日誌
2025/07/17
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麻績村の聖高原管理センター社長・宮下喜光さん(80)は、20日に開館60周年を迎える聖博物館について、開館の経緯を詳しく記した資料を大切に保管している。麻績村長を8期31年務め『長靴村長さん』の愛称で親しまれた父・宮下土義さん(1912~93)が、欠かさず記してきた手書きの「観光日誌」の一部だ。宮下さんは、多くの航空・軍事資料を展示する同館に村の観光振興と平和への強い願いを託した父の思いを今もしのんでいる。
「観光日誌」は、土義さんが昭和36(1961)年に村助役になった当時から記録し始め、37年12月に村長に就任して以降も書き続けていたものだ。同館は40年7月に開館し、戦闘機などの展示物を加えていった。
48年3月の記録では、旧海軍の戦艦陸奥の主砲を展示するため交渉に訪れた広島での鉄道切符やサルベージ会社の名刺とともに経緯を記載。当時の取材に「戦争の悲惨さを訴え、平和を貫くためのシンボル」と語った新聞の切り抜きを添えている。航空自衛隊からジェット戦闘機を借りるなどして46年に開館した航空資料館の設立趣意の記録では「過去を偲び、現代を知り、未来に夢を馳せることこそ航空教育の高揚に資するもの大なりと信じ…」と記した。
宮下さんは、展示について「もちろん『観光の目玉に』との思いはあり、当時も『戦争の正当化では』との批判もあった」としつつ、土義さんがかつて旧陸軍航空士官として教えた少年飛行兵が太平洋戦争末期に特攻で命を散らした後悔も原動力だったとし「誰よりも平和への思いを必死に周囲に訴え粘り強く説得する人だった」と振り返る。「父の記録が将来、村の歴史を振り返る貴重な資料となれば」と願った。
※土義さんは、「土」に「、」。
