移住者が新ワイナリー 塩尻・広丘郷原の旧JA施設活用 秋開所へ

塩尻市広丘郷原の旧JAワイナリー施設を活用し、県外出身の塩尻ワイン大学卒業生ら3人が、ワイナリー「CAVE(カーヴ)桔梗」を開所する。「桔梗ケ原・松本ワインバレー特区」で年間2キロリットルの少量でも製造が可能な酒類製造免許を6月末に取得し、9月に初めて仕込む。歴史が古く市を代表する品種ながら生産量が減ったコンコード、ナイヤガラの復興も掲げ、地域に愛されるワイナリーを目指す。
14日に市役所を訪れた関係者に、百瀬敬市長は「市にとってもありがたい。良いワインを造って付加価値を付けて」と激励した。
醸造会社SHIOJIRI BASE(しおじりべーす)の社長・小川真さん(51)=大門、会長の橋本毅一郎さん(53)、取締役の橋本美範さん(52)夫妻=宗賀=が経営する。小川さんと、美範さんは平成30(2018)年~令和3年に市のワイン産業の人材育成講座・塩尻ワイン大学で学んだ2期生。会社は令和5年8月に設立、同3年に閉鎖したJAが所有する施設(鉄骨平屋約1000平方メートル)のうち450平方メートルを借り、改修した。
醸造・貯蔵用タンクは容量300~2000リットルを備える。それぞれにブドウを栽培する小川さん、橋本さんの各ブランド、かつてJAが手掛けたコンコードのブランドを中心に受託醸造もする。地元の要望で、契約農家から原料を仕入れ安価で提供する「還元ワイン」を復活させる。今季はコンコードのワイン(720ミリリットル)を700本、一升瓶(1・8リットル)を200本、ジュース(720ミリリットル)を1000本仕込む予定だ。
大阪府吹田市出身の小川さんはコンサルティング会社を退職し42歳で塩尻で就農、今は広丘堅石の畑1ヘクタールでブドウを育てる。橋本さん夫妻は令和4年に東京から家族で移住。商社に勤める美範さんが先行して同2年に片丘でブドウ栽培を始め、現在1・2ヘクタールの畑で計16種類を管理する。
令和6年度に市内ワイナリーで取り扱った加工用ブドウは、コンコードが694トン、ナイヤガラが345トンといずれも10年前に比べ5割強減った。単価が低いことなどが原因だ。小川さんは「ワイン大学から始まった地域への恩返し。頑張りたい。いずれは輸出もしたい」と語る。美範さんは「ワイナリー開設のハードルは高いが、ブドウ栽培やワイン醸造が引き継げる循環機能ができれば」と話す。
市内ワイナリーはカーヴ桔梗を加え17社となる。