戦争に翻弄された若者 戦時下の旧制高等学校当時の記録50点紹介
2025/07/13
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戦後80年の企画展「戦時下の旧制高等学校」が12日、松本市県3の旧制高等学校記念館で始まった。戦争に向かう下地となった治安維持法や日中戦争、太平洋戦争などが旧制松本高等学校生らに与えた影響を当時の記録など約50点を並べて紹介。思想の弾圧、勤労動員、学徒出陣―と時代に翻弄された若者たちの姿を浮き彫りにしている。8月31日まで。
松高思想事件(松高事件)と呼ばれる治安維持法下の思想弾圧事件では、昭和5(1930)年以降5回にわたって、社会主義に接するなどした松高生が検挙された。学内の自治は奪われ、校友会も解散。新たに学生修練組織の「報国団」が組織され「召さるれば直に銃を執るべく」などとつづった当時の校長の所感が紹介される。
軍事教練や勤労奉仕のほか、昭和18年には文科系学生の徴兵延期措置が撤廃され、徴兵年齢も引き下げられた。講堂で開かれた学徒出陣の壮行会の写真や戦地から恩師に宛てた手紙、松高出身で唯一特攻死した福元猛寛の記録も展示された。
同館は常設展でも戦時下の旧制高校の様子を紹介しており、企画展を導入に双方を見学してもらいたい考えという。松高卒業生の作家・辻邦生が「一切の価値観は一挙に崩壊し人々は自己の方向性を喪失した」と書き記したように、混乱は終戦後も続いた。鈴木美恵学芸員は「多感な若者たちが悩み、苦しみ、戦争に巻き込まれていった。わが身に置き換えて思いをはせ、当時を深く知る入り口にしてほしい」と話している。観覧無料。
