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2025年

過疎地の農用地は存続危機 持続可能な農業へ基盤整備望む声も

2025/06/19
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 昨年度末にまとめられた「地域計画」で、松本市の農用地の4分の1超が「後継者不在」であることが明らかになった。特に事態が深刻なのは、山あいの過疎地域だ。市北部の四賀地区は、後継者不在の農用地面積が地区全体の約43%(306ヘクタール)に上り、市内19地区で奈川、入山辺に次いで3番目に高い。持続的な地域農業のために新たな基盤整備を求める農家もいて、抜本的な構造の見直しが必要と言えそうだ。
 地区内の反町に住む本木泉一郎さん(83)は家族や農家仲間の手を借りながら約10ヘクタールで水稲を栽培し、水田のほとんどは離農した農家から預かっている。米の値段が上昇した昨年は多少の利益が出たものの、それまではほぼ「ただ働き」で地域の農地を守ってきた。会田川や保福寺川といった中小の河川から取水して田を潤す四賀地区は用水路の水量が安定せず、長年水不足に悩まされてきた。近年は獣害が深刻化。松枯れの倒木で獣害防護柵が破損するなど対策はままならない。仲間の助けもあり「農業は楽しい」というが「休む暇もない農家の仕事を、若い人が継ぐだろうか」と不安視する。
 一方、スマート農業や大規模化で課題に挑戦する農家もいる。近くの本木一治さん(83)は安曇野市内で無線操縦装置の販売店を営んでいるが、15年ほど前に水稲農業を始め、徐々に規模を拡大。令和3年には株式会社を立ち上げ、現在は正社員2人を雇用し、水稲15ヘクタールなど計18ヘクタールの農地を管理する。これまでの経歴を生かし、農業用ドローンを駆使した施肥や農薬散布を行うなど、省力化に努めている。「課題があるから面白い」といい、さらなる経営規模拡大にも意欲を見せる。
 ただ、個人の意欲だけで越えられない壁もある。地区の水田の多くは昭和40~50年代にほ場や用水路の基盤整備事業を行ったが、多くの施設が老朽化。耕地や農道の陥没や、用水路からの漏水が頻発し、作況に影響を与えるほど深刻な箇所もある。一治さんは「順序よく作業をしたいのに予定通り田んぼに水が入っていないこともある」といい「将来を考え、再度基盤整備を行う必要もあるのでは」と話す。

地下の水路が破損し陥没した農道。漏水が発生していて水量の調節ができないため、ほ場の取水口近くの苗は生育が鈍くなっている