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2025年

松本の「城町文庫丸の内店」開設2年 個性あふれる小さな店、次々と

2025/06/17
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明治時代の近代建築を活用した城町文庫丸の内店

 松本市役所に隣接する築110年余の市近代遺産を活用した、小さな複合店舗「城町文庫丸の内店」が開設2年を迎えた。近代建築の取り壊しが市内で相次ぐ中「いい建物を守っていく仕組み」を実践して地域へ波及させようと、市民有志が取り組む「信州松本城町文庫」の2号店だ。雰囲気のあるたたずまいや手頃な賃料が人を呼び、5~6月にもカフェやバスクチーズケーキ専門店が相次ぎ出店。個性が詰まったスポットになっている。

6月下旬オープンのバスクチーズケーキ店(右)と先月開店したお持ち帰りカフェ和日(左)

 明治40(1907)年ごろに建てられた旧新家医院が前身。かつて診察室や待合室だった1階を6区画に区切り、1区画あたり月3万円前後で貸し出している。各区画は10平方メートル前後と小さいが、新たな事業を始めたい人が一歩を踏み出しやすい条件を整えた。
 6月下旬にバスクチーズケーキ店を開店する花岡誠一さん(62)=岡谷市=は、都内で四半世紀営んだカフェ&ダイニング「渋谷ウサギ」を渋谷駅一帯の再開発に伴い閉店。今春Uターンした。松本は10代の頃から憧れの街だが市場動向が分からない。歩く中で目に留まった丸の内店の雰囲気や手頃な賃料に引かれ「まずはここから」と再出発の地に選んだ。
 高温で焦げ目がつくまで焼き上げるスペイン・バスク地方のチーズケーキを常時4~6種類販売する予定で「松本の良さは各店の個性。わざわざ来てもらえる店を目指したい」と話す。
 館内では他に木軸ペンの店や無人販売書店、フットマッサージ、5月に開店したテイクアウトカフェが営業する。この2年間には丸の内店を経て移転・独立した出店者もいた。
 城町文庫の運営を代表する市内の行政書士・藤木大介さん(43)は「一棟貸しとは違う強みが、結果的に建物を生かすことにつながっている。城町文庫を一つのモデルに空き家が有効活用され、お城周辺が活性化すればうれしい」と話している。