田淵行男の細密画に光 安曇野市の記念館が企画展 蝶の美しさと特徴伝える40点を紹介
2025/06/11
後で読む
安曇野に疎開し、高山蝶の生態研究を行った山岳写真家・田淵行男(1905~89)の生誕120周年を今年迎え、安曇野市豊科南穂高の田淵行男記念館が細密画展「蝶の道」を開いている。図鑑が少なかった時代、田淵は「蝶の美しさを伝えたい」と自ら図鑑を制作しようと17歳ころに細密画(水彩画)を描き始めた。代表作や初期作など40点を紹介している。7月21日まで。
市天然記念物に指定され、田淵が「草原の青い星」とたたえた「オオルリシジミ」は、美しい青色とオレンジ色の筋が鮮やかに描かれている。
生態の解明に力を注いだ高山蝶「クモマツマキチョウ」は、唐草のような草ずり模様と鮮やかなだいだい色の羽が特徴的だ。
ヒメギフチョウやミヤマカラスアゲハなどさまざまな蝶が色彩豊かで丁寧に描写されている。大正13(1924)年、19歳ころに描いたカラスアゲハやベニシジミもある。
東京都町田市から来館した安田新治さん(76)は「田淵の作品を見て蝶が好きになった。自然の芸術を表現した素晴らしい作品」と話した。
田淵は蝶を描くことを「写蝶」といい、ひと頃は精密に本物に近づけることを目指した。その後、自分の感受性に根差して特徴を強調して描くことも表現の一つとした。同館は蝶や甲虫など田淵の細密画472点を収蔵している。
中田信好館長は「本物よりも本物に見える作品。節目に合わせて多くの作品を展示しているのでぜひ楽しんでほしい」と呼び掛けている。
午前9時~午後5時で月曜休館、入館料310円。
