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2025年

塩尻・奈良井の未来像 冊子に まちづくりの指針示す 区内で全戸配布 移住相談活用も

2025/05/29
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奈良井ビジョンブックを持つ(左から)小嶋区長、鎌亮治副区長、工藤敬司奈良井ラボ長、新雄太東大工学部特任助教

 塩尻市の奈良井区は、自分たちの地域の奈良井のありたい姿をまとめた冊子「ビジョンブック」を作製した。区民や事業者らの今後のまちづくり活動の指針となる。区内に全戸配布し、市でも移住定住希望者が集う相談会などに活用してもらう。
 A5判56ページ。表紙絵は切り絵作家・柳沢京子さんが祭りの様子を描いた作品を用いた。100年先を見据えた区のキャッチコピーは「町並みに生きる」。歴史や文化に敬意を払い、人間同士のつながりを大切に景観を守るため連携し、社会情勢などの変化に対応し続ける決意を表す。
 「暮らし」「文化・祭り」「観光」「空き家」の各観点で目指す姿と取り組む項目を挙げ、主体も「区民」「移住希望者」「事業者」「観光客」に分け見やすく表現した。「暮らし」では目指す姿を「ゆるやかなつながりで、安全に安心して住み続けられるまち」とし、防災意識を持つため避難訓練を行うなどとした。同区で活動する東京大学の学生が聞き取った、地元の小中高生の考えも載せた。
 同区では大手ゼネコンの外部資本参入を機に地域再考の動きが生まれた。令和3年度に始めた、住民主役のまちづくりを進める対話の場「奈良井ラボ」で住民同士が課題を共有し議論した。ビジョンブックの内容検討は6年度、岡山県倉敷市の美観地区の事例学習から本格的に取り組んだ。
 区民数は市に合併した20年前に比べ4割減の561人(4月1日時点)だ。区内にある奈良井宿は国の重要伝統的建造物群に昭和53(1978)年に選定され、あと数年で50年を迎える。小嶋正則区長は「ここからがスタート。取り組みを検証し、50年に向け盛り上げていきたい」と語る。
 事業費約70万円で計2000部作製。全戸配布するとともに20日には市に200部を提供した。移住定住相談会などで活用される見通し。