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2025年

2000円台の備蓄米 消費者や生産者に期待と不安

2025/05/31
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 米の価格高騰や品不足に対応するため、政府が放出した備蓄米の一般販売が行われて1カ月半がたったが、市場価格は上がり続けている。政府は「古古米」となる2022(令和4)年産の備蓄米について、大手小売店を対象に随意契約での売り渡しを進めており、6月初旬には市場に出回るとみられる。5キロ2000円台での販売が見込まれる中、松本地方の米の販売店舗や消費者、生産者に期待と不安が広がっている。
 松本地方のあるスーパーでは、3月入札分の「古米」となる2023年産の備蓄米の販売を4月10日に始めた。月1回のペースで入荷があり、5キロ3500円台で販売し「店頭に並ぶと2日ほどで全て売れる」(店舗責任者)。銘柄米も入荷しているため、米が売り切れたことはないといい、「古古古米」となる2021年産の備蓄米の取り扱いは「味の保証ができない」と慎重な対応を取る。同じ「古米」の備蓄米を3000円台で販売する別の店舗の関係者は「2000円台の備蓄米が出回れば、すでに発注済みの古米の備蓄米が売れなくなるのでは」と心配する。
 松本地方では、米の棚が空になっているスーパーが多い。買い物をしていた塩尻市の男性(43)は「米は見つけた時にためらわずに買っている。古古古米でも良いので、早く販売して」と熱望する。70代女性は「家の米がなくなりそうだが、備蓄米が出るまで購入を我慢する」と、早期の販売を期待した。
 生産者の思いは複雑だ。松本市と安曇野市の25ヘクタールで稲作に取り組む濵農場(松本市島内)の経営者・濵幾洋さん(46)は「これを機に消費者の方に農家や農業に関心を持ってもらい、安値安定だった過去の米の相場が変わることを期待したい」と望み、「米の相場が5キロ当たり3000円から3500円前後に落ち着けば」と願った。
 JA松本ハイランドの田中均組合長は「パン食などに代わることで米離れが進まないか心配」と不安視する。今回の米騒動について「一過性の問題にすれば、また同じことが起こり得る。消費者の米への関心が高まった今、行政や事業者だけでなく、生産者、消費者が議論を尽くし、適正な価格を決めるタイミングになれば」と話している。

銘柄米が並ぶ松本地方のスーパーの米売り場。備蓄米は売り切れが続いている