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2025年

臼井吉見著の長編大河小説 復刊『安曇野』文庫版が完売 安曇野市文書館で販売分の500セット

2025/05/30
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 安曇野市が復刊に取り組んだ地元出身の小説家・臼井吉見(1905~87)の長編大河小説『安曇野』(筑摩書房)が29日、完売した。復刊させた文庫版1100セット(5巻1セット)のうち、500セットを堀金烏川の市文書館で3月2日から販売。全国から注文が相次ぎ、3カ月で売り切れたことに関係者が驚いている。
 事前予約分の175セットを除き、3月に202セット、4月に96セット、5月に残り27セットが売れた。全国紙で取り上げられたり、3月のお披露目会で講演した文芸評論家の斎藤美奈子さんがコラムで紹介したりとPRが奏功した。
 最後の1セットを購入したのは、6月1日の信州安曇野ハーフマラソンに出場する千葉県船橋市の男性だという。平沢重人・文書館長は、わずか3カ月での完売について「筑摩書房もここまでの反響は予想していなかったのでは」とみる。
 復刊に向けては、市がインターネット上で資金を募るクラウドファンディングや企業・団体からの寄付で集まった約300万円などを充てた。太田寛市長は完売を受け、「これだけ多くの方に関心を寄せていただけてありがたい。復刊してよかった」と語った。
 復刊した1100セットのうち、400セットは周辺の自治体や小中学校、高校、図書館、友好都市などに寄贈した。筑摩書房の販売分200セットのうちインターネット分は発売1週間程度で完売し、書店分は一部で残っているという。
 『安曇野』は、登場人物が2000人以上と膨大で全巻読破が難しい難解小説としても知られている。「一人では読めない」「どう読んだらいいのか分からない」といった声を受け、臼井吉見文学館友の会が9月7日に堀金公民館講堂で公開座談会を開く。「難解小説『安曇野』を読む楽しさ」をテーマに、斎藤さんの基調講演や座談会などがある。

完売を知らせる張り紙(市文書館)