2023.6.23みすず野
「歴史探偵」こと作家の半藤一利さんは好角家だった。へぇーと思いながら著書『大相撲こてんごてん』(ベースボール・マガジン社)を読んでいたら、この人も相撲好きなのかと意外な名が...夏目漱石◆そんなに面白いかと問われ〈相撲は芸術だよ〉と答えた。引けば長くなるので要約すると―日頃の稽古で全筋肉を自在に働かせ、頭で考えるのではなく相手に応じて仕掛け、瞬間に勝ちをとる。パッと負ける。〈猛練習〉のたまものなのだ。12月に亡くなった漱石は、その年の春場所にも国技館へ足を運んだ◆木曽の空に相撲のぼりが映える。御嶽海関が所属する出羽海部屋の合宿があすまで。最終日の稽古は公開されるという。ふるさとの土俵が再起を期す場となればいい。豆力士たちには忘れられない思い出となるだろう。筆者も幼い頃、父親に連れられて稽古場巡りをしたことがある。若い衆に遊んでもらった。髪を固めるびん付け油の匂いが懐かしい◆信州ゆかりの彫刻家・石井鶴三の角界通は筋金入りで、相撲博物館長も務めた。稽古に触れた文を半藤さんが挙げる。出来上がった体だけではなく〈練磨―つまり過程を見たい〉