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松本出身・山崎貴さん初監督の短編映画 43年ぶりに発見され上映会

初めて映画を製作した43年前を生き生きと振り返る山崎監督

 松本市出身の映画監督・山崎貴さん(58)が清水中学校3年生当時に友人と撮った初監督作品で、その後43年間行方が分からなかった短編映画「GLORY(グローリー)」のフィルムが今夏、見つかった。市内に眠る8㍉フィルムを集め、地域映画を制作する映像作家・三好大輔さん(50)とまつもとフィルムコモンズのプロジェクトに寄せられた。20日夜、三好さんらの計らいで山崎さんを囲む上映会が市内で実現。幻の作品との再会に関係者が歓喜した。

 作品は山崎さんが10人ほどの仲間と製作したSF映画。宇宙船に乗った人類が、核戦争で住めなくなった地球に代わる惑星を見つけて着陸を試みる物語だ。
 「受験生だったから親たちに内緒で」(山崎さん)製作に一夏をかけた。新聞配達で資金を稼ぎ、8㍉カメラを貸した安曇野市三郷の野本忠さん(73)宅やロケ地の美ケ原高原まで自転車で出掛けた。宇宙船の模型作りでは、山崎さんのこだわりから友人たちと木工用接着剤を掛け合う大げんかも。映画は学校の文化祭で大反響を呼んだ。
 フィルムの発見は6月。山崎さんの後輩の清水中同窓生が同プロジェクトに寄せたフィルムの中から三好さん夫妻が確認した。「名も無き記録を集める地道な活動が、多くの人に喜びや感動をもたらす大発見につながった」(フィルムコモンズ)。
 20日の上映会には山崎さんや当時の製作仲間、同級生、野本さんら10人余が集まった。皆「心臓に悪い」と笑いつつも十数分間の鑑賞は真剣そのもの。車座になって思い出を語ると、野本さんは当時貸した8㍉カメラを取り出し「この中から映画界で活躍する人が出ると信じていた」。カメラマンを務めた原誠さん(57)=松本市惣社=は「大監督の最初のスタッフの一員になれた。本当に光栄」と声を上げた。
 山崎さんは「映画を作るとこういう喜びがあるんだという中学時代の経験が原点。大きな1ページだったことを再確認できた」と喜んだ。
 上映会の様子の一部はプロジェクトが来年2月の完成上映を予定する地域映画に組み込まれる。