連載・特集

2022.6.29 みすず野

 知識の浅さはすぐに露呈する。篠ノ井線の小史をつづったところ読者から「では、中央線はいつ開通して新宿までつながったのでしょうか?」と便りが届いた。疑問ごもっともである。慌てて書籍を繰った◆歌人の伊藤左千夫は明治39(1906)年8月〈信濃甲斐の間に、汽車通ひ初めつ〉と聞き、仲間や教え子が大勢いる信州へ旅立つ。6月に岡谷―塩尻間が通じた。2年前の来訪時は韮崎が終点だから感慨ひとしおだったろう。篠ノ井線の松本―塩尻間は松本駅開業の半年後、明治35年12月に開通している◆中央線はいつ開通?の問いに答えるには、鉄道の黎明期までさかのぼらなければならない。政府は明治18年に高崎―横川間を開け、そのまま中山道に沿って京都へ至る鉄路を敷こうとした。ところが碓氷峠越えは困難だと海岸沿いの東海道に変更してしまう(『中央本線、全線開通!』交通新聞社新書)◆内陸部にも鉄道が必要との軍部の声で、甲府経由の八王子―名古屋間が明治29年に起工。15年後の44年5月1日に最終区間の宮ノ越―木曽福島がつながる。今の東線と西線を直通列車が昭和36(1961)年まで走っていた。

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