連載・特集

2022.6.27 みすず野

 蛍が舞っていると聞けば、じっとしていられない。蒸し暑い夜の会社帰り、お城の北の大門沢川に寄ってみた。暗がりに同好の人の姿がちらほら。川面を覆う茂みに目を凝らすと、はかなげな光の点滅が一つ、また一つ...時折ふわり◆日本人が古くからこの光に寄せてきた思いの深さは―山本勝夫さんの26日付リレーコラムに詳しい。和泉式部や『源氏物語』を挙げてつづっておられた。美しい日本語の名文に酔い「玉鬘の顔を照らすほどなら光源氏、蛍をよほどごっそり放したのか」と無粋なツッコミも引っ込む◆暮らしのなかで蛍が見られる環境は多くの人の努力のたまものだ。途絶えた光を復活させようと、各地に動きが広がった。いま行政が旗を振る「脱炭素」にも、蛍のように目に見えて分かりやすい目標があるといい。取り組みの成否は住民の協力を引き出せるかに懸かっていよう◆蛍と聞いて心に浮かぶ思い出は人それぞれ。スピッツは〈すぐに消えそうで、悲しいほどささやかな光〉と歌った。曲名は「ホタル」だが歌詞に一つも蛍が出てこない。山本さんの名文を借りれば〈胸の底の闇に、蛍火の淡い光を思う夜〉である。

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