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昭和の風情 のれん40年ぶり復活 塩尻の銭湯・桑の湯

40数年ぶりに復活した桑の湯ののれん

 塩尻市内唯一の銭湯・桑の湯(大門一番町)の店先で、営業中だと知らせるのれんが四十数年ぶりに復活した。ある出来事で〝お蔵入り〟となり、たんすの奥底で出番を待ち続けた名入りのれんが正面口に掲げられた。昭和の風情に愛着を感じて通う客に、古くて新しい目印が喜ばれている。

 のれんは縦55センチ、横170センチの黒色の染め物で「桑の湯」の文字が入る。営業開始の午後3時に竹ざおに通して掲げている。常連客や従業員から「銭湯らしくなった」「やっぱり商売には必要だな」などという声が聞かれ、既に欠かせない存在だ。
 昭和45(1970)年生まれの4代目経営者・桑澤弘幸さん(51)にとって、物心ついた時には、のれんはないのが当たり前の光景だった。昨秋、経営を支える知人の助言でのれんを用意しようとしたところ、母親の節代さん(78)に「実はある」と言われ、初めて存在を知った。
 かつて木材店も営んだ桑澤家は昭和4年、廃材を利用したまき風呂で桑の湯を創業した。のれんは昭和40年代までは掲げられていたようだ。節代さんによると、平成31(2019)年3月に102歳で死去した義母・泉さんが四十数年前、頭に当たると客にとがめられたのを機に外してしまったが、節代さんが洗濯して大切に保管していた。
 桑澤さん親子は、地域住民の支援も得て銭湯を切り盛りする。のれんを掛ける金具の取り付けには、弘幸さんの友人で鉄工設備業に携わる福田詠一さん(33)が協力した。
 泉さんの死去の直後には、弘幸さんの父で3代目の英晴さん=享年79=も亡くなった。弘幸さんは再び店の顔になったのれんを見て「思いがけずしっくり来た。いろんな方に支えられている銭湯で、できる限りのれんを守っていきたい」と語った。

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