連載・特集

2022.5.22みすず野

 15年ほど前、団塊の世代の作家関川夏央は、大糸線の電車に揺られ、松本から糸魚川までの旅をした。「北アルプスをはるか高みにのぞみながらゆったりと電車は北へ走る。信濃大町までで客のほとんどは降りてしまい、南小谷まで行ったのは五人だけだった。私のほかは初老のカップル旅行者がふた組である」(『汽車旅放浪記』新潮文庫)という旅だ◆車中で団塊の世代について考える。「人は誰でも二十五歳までにすごした文化から自由になれない。それは檻のごときものだ」と。流行音楽はビートルズか、せいぜいサザンオールスターズまで。芥川賞だけは気にしているが、いざ読むとこんなもの文学ではない、などと騒ぐ◆団塊の世代の背中を憧れをもって見つめ、その世代に属する人たちが作り出すものに強く引かれた。彼らの姿はとにかく「かっこよかった」のだ。1960年代末から70年代にかけてのこと◆レコードレーベルならURCやベルウッド、出版社は晶文社、雑誌ならB6判の『宝島』。こうした文化に育まれた。大筋は今も変わらない。作家のいうとおりで「25歳までにすごした文化から自由になれない」のだ。

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