連載・特集

2022.5.14 みすず野

 松本深志高校出身で、全国の居酒屋を訪ね、その旅や店を紹介しているグラフィックデザイナー、作家の太田和彦さんの新刊『飲むぞ今夜も、旅の空』(小学館文庫)が刊行された。小紙にも寄稿されている太田さんは、同書で「信州そばの伝統に、新しき風」の題で、子どものころの思い出などをつづっている◆「松本から北の麻績村はたまたま、父が小学校長をして一家が住んでいた所で、私はここの中学を出て汽車(SLです)で四〇分かけて松本の高校に通学していた」と記す◆昔訪れた店やそば打ちの様子を見に、松本市内のそば店を巡る。「懐かしい老舗のあと訪れた三軒は、どこも信州そばに自分流を重ねてそばを打ち、私にはそれぞれの考えの違いが面白く、すべて大変おいしかった」と絶賛している◆本書では全国の居酒屋や町、人との出会いを語る。さらに作家・川上弘美さんとの対談を収め、解説は松本を何度も訪れ、お気に入りの旅の宿があるという書評家・岡崎武志さんだ。見知らぬ町の居酒屋を訪ねる機会に恵まれなくても、ページを繰り、太田さんの文章に酔いながら、一献傾ける無上のひとときが待っている。