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21年前制作「平和の願い込めた」ついたて 寿福祉ひろばで今も使用

21年前に住民とともに完成させた平和のついたてを眺める百瀬しづ枝さん

 松本市寿豊丘の寿地区福祉ひろばで、住民が平成13(2001)年に平和を願って絵画を共同制作した一枚のついたてが今も大切に使われている。かつて太平洋戦争を経験した高齢者も多く参加し、描かれた絵のモチーフは「ヒマワリが咲き競う中、青空に輝く平和の光を求めて飛び立つハト」だ。ロシアによるウクライナ侵攻で世界が混迷を深める中、制作時にコーディネーターを務めた百瀬しづ枝さん(77)=寿北9=は、平和を願う住民の素朴な思いが今後も紡がれるよう切に願っている。

 ついたては高さ約1.6㍍、横約2㍍。絵画はパネルを約100枚に分割し「千人針の針を平和の筆に持ちかえて」を合言葉に一人1枚ずつ描いたトールペイントだ。裏面は翌14年に同様の合言葉で約100人が彫った木彫を張っている。表裏を合わせて完成した。
 寿地区福祉ひろばが10年に開館した当時は、戦争を経験して老後を迎えた住民同士が憩い、かつてのつらい思い出を互いに語り合う場でもあった。次第に戦争を語り継ぐ催しや、平和を願う多彩な作品づくりが始まったという。
 同僚の百瀬聡子さん(77)=寿豊丘=と共に住民の活動を支えたしづ枝さんは、ついたての絵画を制作している最中、13年9月11日に米同時多発テロが発生したことから、「平和を願う活動を覆す現実の無力さにさいなまれたが励まし合って絵画を完成させた」と振り返る。その上で今回のウクライナ侵攻に触れ「今回も同じ無力感がある。だが福祉ひろばが今も当時の活動の意義を語り継いでくれているのが救いだ。ついたてと共に平和を願う住民の思いを伝えてほしい」と語る。